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2012年GSX-R1000は、スーパースポーツに要求される「走る」「曲がる」「止まる」の3つの基本性能を向上させる前に、ブランドコンセプトである、「常に“Top Performer”であり続けること」を徹底して見直した。
なぜなら、究極の目標は「サーキット性能のアップ」であったからだ。
このクラスのトップライダーの要求を実現するため、1本出しマフラーとすることにより2kgの軽量化を実現。そして、中速域の加速フィーリングをアップさせた。
2011年モデルをベースに車体性能を最大限に引き出すため、エンジンには細かなチューニングが施された。この新しいパッケージは、サーキットにおいて安定したラップタイムの短縮を可能としている。
2012年GSX-R1000は、エンジン・車体・スタイリングのアップデートが融合し、GSX-Rシリーズのフラッグシップとして、勝利へのパフォーマンスを得た。
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2012年GSX-R1000のエンジンは、「勝利のためには勝利できるエンジン性能を」というコンセプトに磨きをかけた。
圧縮比を12.8:1から12.9:1へ高め、高い燃焼効率と中速域での加速感のアップを実現。新たに採用した1本出しマフラーにより、よりシャープなハンドリングを獲得。新たなエキゾーストシステムのレイアウトとピストンの軽量化により、高速域での出力を維持しながら中速域の出力をアップ。さらに、燃費は約8%向上*させた。
*2011年モデル比 WMTCモード:2011年10月スズキ調べ
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エキゾーストシステム
2本出しマフラーを1本出しマフラーに変更。エキゾーストシステムは、大幅な軽量化を実現した。これは、コーナーでの左右の切り返しなど、シャープなハンドリングに貢献する。また、中速域の出力増加による加速感のアップは、サーキットにおいてその違いが顕著になる。
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ピストン
MotoGPレーシングエンジンの開発に使用される疲労解析技術を利用したピストンデザインにより、強度と耐久性を維持しながら軽量化を実現。
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[変更点]
・ピンボス幅の縮小。スカート形状を最適化、インテーク側とエキゾースト側の形状は非対称とした。
・ピストンは全体の剛性バランスを最適化。2011年モデルと比較して約11%の軽量化を実現。
・ピストン上面のバルブ逃げは、滑らかな形状とし燃焼効率のアップに貢献。
中低速のトルクと加速性能のアップ、俊敏なスロットルレスポンスがサーキットにおけるコーナーの立ち上がりで、大きなアドバンテージとなる。さらに低燃費を実現している。
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クランクケース
各シリンダー横にある5角形のベンチレーションホールは、2011年モデルの矩形ベンチレーションホールより拡大され、下降中のピストンの下に閉じ込められた空気を隣接するシリンダーに、より素早く逃がすことが可能。ベンチレーションホールの形状は、上側で広く下側で狭くなっており、上側でより多く空気が流れ下側で少ない流れとなり、実際の空気の流れと一致させている。これにより、下降するピストンによるクランクケース内部の圧力抵抗を低減し、ポンピングロスを抑えている。
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カムシャフト
エキゾーストシステム変更に伴う出力特性変化に合わせて、カムプロフィールを最適化した。2011年モデルと同等の最高出力を維持し、さらにサーキット性能をアップさせた。
[変更点]
・新デザインの1本出しマフラーに対応するため、MotoGPレーシングエンジンの開発技術を利用し、エキゾースト側のカムプロフィールを変更した。インテーク側のカムプロフィールは2011年モデルを踏襲。
・インテーク、エキゾースト各バルブが開いているオーバーラップを短縮。トップエンドの出力特性を変更し、エンジンのポテンシャルをアップするセッティングとした。
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GSX-R1000のレッドゾーンは13,500rpmからであり、市販車としては高いレーシングマシンに匹敵するセッティングである。このような高いセッティングでは、バルブサージングを起こしやすくなるが、MotoGPのために開発されたスズキ独自のサージング抑制技術により、正確なカムリフトカーブを作成。バルブシステムの耐久性を維持しながら、カムプロフィールの変更により、全く新しいレベルのエンジン性能を獲得した。また、カムノーズの角度も見直され、2011年モデル同様の最高出力を確保している。
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バックトルクリミッター付クラッチ
シフトダウンをスムーズに行えるバックトルクリミッター付クラッチは、2011年モデルを継承。シフトダウン時の車体の安定性に貢献。減速時にはライダーにとって大きなアドバンテージとなる。
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エンジンコントロールモジュール(ECM)
ECMは、最先端のエンジンマネジメントを提供。1本出しマフラーとエンジン各部の見直しの効果を最大限に発揮するために、セッティングが最適化された。
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イリジウムスパークプラグ
NGK社製CR9EIA-9イリジウムスパークプラグは、2011年モデルを継承。高い燃焼効率とエンジンセッティングの忠実な再現を実現する。
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スズキドライブモードセレクター(S-DMS)
様々な走行状況(異なるサーキットやワインディング路)において、3種類のモードからライダーの好みによって出力特性を選択できるS-DMSを搭載。モード選択スイッチは左ハンドルバーにマウント、人さし指と親指を使用する2つのボタンとすることで、高い操作性を確保。
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2011年モデルから継承された車体は、サーキットで勝利するための俊敏なレスポンスと安定性を特長とする走行性能を持つ。「走る」「曲る」「止まる」の基本性能をさらにアップさせることにより、次の特徴を生む。
【さらに進化したハンドリングとブレーキ性能】 新たに採用されたブレンボ社製フロントブレーキキャリパーとビッグピストンフロントフォークのセッティング変更により、コーナリング中のライン修正など、サーキットにおいてライダーの能力が最大限に発揮される。これらは、コーナーの脱出速度を高め、ラップタイムの短縮に貢献する。
【さらに進化したコントロール性と俊敏さ】 進化したフロントブレーキ、フロントフォーク、フロント/リヤタイヤ、フロントアクスル。これらの相乗効果により、2012年GSX-R1000のコントロール性と走行性能は、さらなる高みへと引き上げられた。
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フレーム
車体の基本的な要素は、2011年GSX-R1000から受継がれた。5つのアルミ合金セクションを溶接したツインスパーフィレーム。3つのアルミ合金セクションを溶接したスイングアームは、マフラーの逃げのためにアーチ状とる。ホイールベースはクラス最短*を維持している。(*2011年9月:スズキ調べ:1000cm3 スポーツモデル)
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フロントブレーキキャリパー
フロントディスクブレーキには、ブレンボ社製ラジアルマウントモノブロックキャリパーを新たに採用。
モノブロックキャリパーは、従来のボルト固定タイプに比べ軽量かつ剛性が高く、ライダーへのフィードバック性も高い。大径になったピストンは、ブレーキディスクに、より大きな力を与え高いブレーキ性能を実現。ブレーキディスクは、厚さを5.5mmから5.0mmとし軽量化に貢献。熱ひずみやクラックへの耐性は、2011年モデルのレベルを維持している。このサンスター技研製フロントブレーキディスクは、スズキが世界で初めてディスクブレーキに採用する耐熱ステンレス鋼を使用。キャリパーとブレーキディスクを含め、ブレーキシステム全体で約130gの軽量化を実現した。
ハードブレーキングでの安定性に貢献する高いブレーキ性能は、強化されたフロントフォークとともに、サーキットにおいてライダーの能力を最大限に発揮させる。
ゴールドのカラーリングと赤色のロゴを採用したブレンボ社製キャリパーが、最先端のブレーキパフォーマンスを象徴する。
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フロントサスペンション
ビッグピストンフロントフォーク(BPF)を継続して採用。フォークレッグ内のカートリッジを廃止、直径39.6mmのピストンをインナーチューブ内に保持する。 BPFの利点は、ライダーへの高いフィードバック性にある。フリクションが少なく、フォーク内の圧力変化が少ないことは、小さなギャップにも高い応答性を示すことを意味する。
新たな変更点は、全長を7mm短縮、ストロークを5mm短縮、よりソフトなセッティングとしている。これは、1本出しマフラーとしたことでの、軽量化とマスの集中化によるものである。 よりソフトなセッティングにより、初期ストロークでの吸収性が高まり、グリップ力がアップ。S字コーナーの切り返しでは、高いコントロール性を実現している。また、サーキットでは、ハードブレーキング時の高い安定性に貢献、高いグリップ力でスロットルを大きく開けることが可能。スロットル開度の少ない一般公道でも高い路面追従性を発揮する。
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フォークスプリングがオイルに完全に浸かることより、フォークオイルの泡立ちが減り、安定した減衰性能を確保している。伸側、圧側ダンピング調整は、フォークキャップのスクリューで行う。
スプリングプリロードアジャスターは、フォークレッグ下部に装備。
また、BPFは、高いメンテナンス性を誇る。
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タイヤ
2012年GSX-R1000のフロントタイヤ、リヤタイヤには、新しいトレッドパターンを採用。フロントタイヤは、2011年モデルと比較して200g軽量化された。新しいトレッドパターンとバネ下重量の軽減により、シャープなハンドリングを実現。
バネ下重量(サスペンションと路面の間のパーツ重量)の軽減は、サーキットにおいてタイヤの路面接地力に大きな効果がある。より接地力が高いということは、より高いトラクションを意味し、特にコーナーの脱出加速やコーナーの頂点に向かうブレーキングに効果がある。
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電子制御式ステアリングダンパー
2011年モデルを継承する、電子制御式ステアリングダンパーは、高速域で減衰力を増加させ、低速域で減衰力を減少させることで、安定性とシャープなハンドリングを両立。
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シート/ライディングポジション
フロントシート、ピリオンシートには、高いホールド感のあるハイグリップシート表皮を新たに採用。加速時にも高い安定感を誇る。
シート高は、2011年モデル同様であり、1,000cm3 スーパースポーツクラスをリードする乗りやすい810mmの低シート高。
軽量かつ機能美を兼ね備えるフットペグは、標準位置の他、14mm後方または14mm下方にも移動可能。
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フロントアクスル
フロントアクスルは、インサイドアクスルスクリュー/中空ボルト型からアウトサイドアクスルスクリュー/ナット型に変更。38.9g軽量化され、バネ下重量の低減によるシャープなハンドリングに貢献。
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2012年のGSX-R1000は、GSX-Rのアイデンティティを継承。エッジ感、立体感、質感を演出している。新たに採用された1本出しマフラーが、俊敏、スリム、コンパクト、タフネスをイメージするスタイリングへと進化させた。
青/白の2トーンカラーリングは変更され、青の面積を増加。GSX-Rシリーズのアグレッシブなイメージを強調する。
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インストルメントパネル
ユーザビリティと高級感を兼ね備えた2012年モデルのインストルメントパネルは、新たにスポーティな印象のブラックタコメーターパネルを採用。
液晶表示には、オドメーター、デュアルトリップ、リザーブトリップ、時計、照明輝度調整表示、水温、油圧警告、S-DMSモード表示、ギアポジションインジケーターを装備。また、右ハンドルバーのスイッチで操作できる99分59秒99まで計測可能なストップウォッチ、ラップタイマー機能を装備。MotoGP マシンゆずりのエンジンRPMインジケーターは、250、500、1000rpmの3つの段階で点灯タイミングを任意で設定可能。サーキットやワインディングにおいてシフトアップのタイミングをアシストする。
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